初日が大成功に終わったのは一体どういうことだったのだろうと思っていた。
私たちは参加者やクライアントに恵まれている。真剣で一所懸命で、でも軽やかな方々に恵まれている。何人かが集まるととても心地よく楽しいのだ。この仕事をしていて良かったと思う瞬間でもある。
天界からも愛されている。日々が奇跡の連続で、どんな奇跡が起きたのかいちいち覚えていられない。
天界はあるいは参加者も含めた私たちは、ハワイのこの地で、今回、何を創造しようとしているのだろう。
こんなことを考えながらドルフィンスイム2日目の朝を迎えた。
初日と同じように朝芝生で準備体操をしてから瞑想をする。
ハワイ島の聖地を望む芝生の上での瞑想は、自然に、イルカたちのエネルギーに通じていく。
そして瞑想中に再び朝日が私たちを照らし始めた。
船に乗り込み出航したとき、すぐに気付いたものがあった。
雲と光。
マスターも含めて天界の存在達は、雲の形をとって私たちにメッセージを送ってくる。
大きな大きな雲が、真っ二つに分かれて輝いていた。同じ大きさで南に向かって伸びていた。
2つに分かれたその間から太陽の光が差し込んでいる。
海は光を受けキラキラと輝いていた。
南に伸びる2つの雲が切れる先では、太陽の光が幾重にも光の柱をおろし、海を照らし出していた。
今日の航路は決まった。二つの雲の切れ間を突っ切ったその先に、イルカ達が待っている。
イルカ達だけでなく、あらゆる天界の存在も。
今日、私たちはイルカと泳ぐだけではない。
あらゆる光の存在とともに、自然に、宇宙に、還っていく。
それは「計画」だった。
壮大な計画で、私という人間の小さな懸念など無意味化していく、しかし確固たる「計画」だった。
誰かが立てたというわけでは、きっとない。
でもこのわずか10数人のメンバーを通して何かをなさしめたいという「確固たる意志」を感じた。
雲がなくなり太陽の光で照らし出されていた場所に到着すると、既に他のイルカツアーの船が何隻か到着していた。
世界中の人たちとともにイルカを軸とした遊びが展開していく。
そこには天界の存在たち、霊的存在たち、そして人類と動物界・自然界が一つに集まった魂のパーティーの場であった。
長い時間それは続いた。ただただ楽しかった。
だんだんと私は自分がイルカなのか人間なのか分からなくなった。一体全体、自分は何者なのかが、分からなくなっていった。
この後もまた多くのイルカの群れと遭遇し、私たちの船は100頭あまりのイルカに先導されていた。
その後も何度かイルカと泳いだ後、美しい湾にいきシュノーケルを楽しむこととした。
何人かの参加者は、完全にシュノーケルをマスターして、イルカのように水中でクルクルと回りながら泳いでいる。10メートル近い深さも軽々とクリアーして潜水していく。透明度の高い海と色彩豊かな魚たちと戯れていた。とても美しい光景だった。
きっと彼らはもう元には戻れない。彼らの細胞のなかで呼び覚まされた自然の叡智は、今後もずっと彼らに何かをささやき続けるに違いない。
彼らが、このあとの自らの人生のなかで、その叡智をどのように翻訳していくのか楽しみでならない。
私はイルカとともに泳いでいるとき、すべてを手放してもいいと思っていた。
私たちに「完全に見守られている」という感覚を呼び起こしてくれるイルカたち。そして瞬時に「気付き」と「絶対なる安心感」が宿ってくる。
イルカはともすれば無邪気で子供っぽい存在と見られがちだ。
彼らの愛らしい表情ゆえだろう。
しかし彼らとともにいれば分かる。
常に深い叡智と安らぎを湛えていることが。彼らは完全に平和なのだ。
完全に、許し許されていることを、知っている存在なのだ。
この日、2時間、海の中にいつづけた。その間、彼らと泳ぎ続けた。
最初のうち、私たち以外にも2,3隻の船がその湾にいてイルカとの泳ぎを楽しんでいた。いったんイルカ達の姿が消えたかに見えた。15分程のことだった。だが海底で数十頭が集まり、じっとしているのが感じられた。 どこにも姿は見えない・・・・。
だが、太陽の光が海底に射し込んでいるその果てに、確かに彼らがいることが感じられた。何かを交信しあっている。時々彼らの鳴き声が聞こえてくる。何らかのタイミングを見計らいながら、彼らはすべてと交信していた。すべてに気付いていようとする意志が感じられた。
私たち以外の船が引き上げていって、10分ほどしてからだろうか。
一斉に彼らが動き出した。皆で70~80頭はいただろうか。直径50メートルほどの大きな円のなかに10メートルほどの小さな円をいくつか形づくりながら、円運動をしていく。あたかも、「この動きがあなたがたの目指す新しい創造活動の基盤だ」と教えているかのようであった。
イルカは、私たち人類がグループで進化していく際の、道しるべを与えてくれる。
それは彼らが常にグループで行動し、かつ自由であり、自立しているから。
イルカの種類によってグループの形成の仕方も異なっているらしい。血縁を重視してグループを形成するものもいれば、ほとんど血縁を意識しないでグループを形成していく種類もいる。
グループや組織のトラウマは誰もが持っている。
権威への抵抗、束縛感、組織的圧力、孤独感や疎外感、上に立つものとしての不安感や決断への抵抗、等々。
彼らはそこから自由になるための、動き方や考え方を私たちに提示しようとしている。そしてそこから自由になったとき、真の共同創造がはじまりすべてが歓びに包まれる。
彼らの円運動はゆるやかに続き、それに上下運動が加わる。つまり、常に海面には10~20頭前後のイルカが姿を現し、海底にはその数倍のイルカ達が潜行しているのだ。そして太陽の光が海底に射し込んでいる、まさにその場所で、彼らはしばらく静かに数分間じっとして、その後ゆるやかに浮上してくる。まるで、光を感じ、光そのものになってから、私たちの前に姿を現してこようとしているかのようだった。
この日を境に私もなにかが変わった。
2時間ものあいだ、上下左右360度、彼らに囲まれている。
そしてその間、彼らは「彼らの光」を放射し続けるのだ。
その光を受けながら、私は、流れにのろうと決めた。
この宇宙の流れにのろうと、決めた。
そのためには、自分の能力や器は関係ない。
必要なことは、彼らのように、すべてからの、有形無形すべてのものからの自由を感じながら、天界とともに共同創造を楽しんでいく意思だ。