前回は映画のお薦めをご紹介したが、今回は書籍のお薦め。
しかも哲学系。
人生に目的は要らない。というか、合わないし、持っていると害がある。
効率化という尺度から人生を自由にしないとならない。
そんな、テーマの本が最近出版された。
私が言うよりずっと説得力を持って書かれている。
誰か哲学者や社会学者が書くといいなと思っていたテーマ。
慶応大学教授の山内志朗著。
私たちはあまたある目的肯定型の自己啓発書やその手のマインドコントロールからそろそろ自由になった方が良い。
そうでないと「いま、ここ」にいることがいつまでも出来ないばかりか、自分を見つめることをせずにどんどんとおバカになってしまう。
「効率的=善」は現代のドグマだ。
本からの抜粋。
・新しい個体が次々とこの世に現れ出てくるということは、そのことだけで、目的が一つしかないことを否定するし、目的がないということを論理的に含意している。
・意味のなさとは自由ということだ。生きてみよという誘いの言葉だ。
・目的合理性に搦めとられない、心の贓物、奥底、内奥から発するものを「愛」と呼べばよい。
・葬式とは、死者が二度とこの世に戻ってこないように封じ込める儀式だった。死者の呪いは恐ろしいから。
・生とは苦と同義語だから、どの生き物もつらいはずだ。
・フロイトが過去の体験で現在の精神状態を説明するのに対し、アドラーは目的や未来を考える。フロイトが過去への眼差しを重視し、アドラーが未来への眼差しを重視しているというのは、重要な対比になっている。
・人間一人一人はオーラを備え、光っている。仏性は誰にでも備わっているから。
・現実というのは、目の前の出来事に注意を向けていることで成立する。
・手を抜いていることに罪悪感を覚えてしまう。いつも全力でやっていなければいけないという強迫観念が、自分をも他者をも縛り付けてしまう。手抜きした方が良いことも多い。
・要するに「裁く倫理」よりも「救う倫理」の方が求められているのだ。
・自生的目的、つまり、自ずと生まれ、目的そのものが目的自身を育てるような目的しか人生にはない。
日頃のセミナー内容と似た部分を随分と感じるかもしれない。
私が推薦している本なのだから当然そうなる(笑)
この本は著者の考える過程をただつらつらと書いているので、読んでいて気持ち良い。
こちらを微塵も説得しようとしていない、分からせようとしていないから、つい説得され分かってしまう。
目的なく書かれたように感じる本。
もし学生時代にこんな講義を受けていたら、どんなだったろう。
- 作者: 山内志朗
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2018/02/10
- メディア: 新書
- この商品を含むブログ (3件) を見る